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自己紹介
看護学生のとき,医学概論と倫理学を教えていた教員に「看護教育って,すごいよね.みんな看護師になる.そんな学問って普通じゃないよ」と言われ,衝撃的でした.今思うと,そのころ「看護って何なのか?」という疑問に対して自分が納得できる答えが見つからず,悩んでいました.
私が看護学生から新人看護師になるころに,「専門看護師(CNS)」が登場します.「自分の街にCNSがいるらしい,その人に会ってみたい!」と思い行動したのが,今の職場に勤務するきっかけです.
その人は西日本初のCNSであり,訪問看護師であり,また経営者でした.ちょうどそのころ,父ががんになり,病院の新人看護師の私は「がん」とラベル付けされるまで,父の異常にさえ気がつきませんでした.何もできず,情けない自分に腹が立ったのでした.そんなときです.その先輩CNSさんから「これからは地域よ! がん看護よ!」と言われたことがきっかけで訪問看護の世界に入り,がん看護専門看護師(OCNS)を目指すことにしました.そこに前述の疑問への答えがあるような,なんだかおもしろそうな気がして,この道を選びました.今だったら,違う領域を選んだかもしれません.
しかし,就職して2ヵ月も経たないうちに,その先輩CNSさんはがんを理由に現場から離れることになります.同じころ,父の状態が悪化し始めました.心細く,不安でした.ただただ,自分の感情にふたをして,鬼のように仕事にのめり込みました.今思えば,現実逃避であり,ときに他人の地雷を踏み,ご迷惑をかけることもありました.そんな失敗だらけの私を見捨てずに成長を見守ってくださった先輩方に感謝しかありません.
そして1年が経ち,先輩CNSさんはサバイバーとなり,新たなフィールドで活動を始めました.同じころ,私は自宅で父を看取りました.今思えば,感情がもみくちゃにされるような1年間でした.何とも言えない不安と自分の看護に責任をもつことの達成感,新たな課題への緊張感が混在していました.そして,このときの体験を含め,「看護師は何をする人なのか」を考え,地域でできるがん看護を探究したことが後の大学院生活につながり,OCNS取得後の活動の基盤となっています.現在は,訪問看護師であり,訪問看護事業所の管理者であり,OCNSであり,またがん領域以外の仕事も行っています.
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