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はじめに
がん臨床において,家族を巻き込んだかたちでの,患者・家族への対応が増している背景には,次の3つの事象を挙げることができる.1つ目は,病院機能の役割分化による,がん専門病院や一般の病院からの緩和ケアあるいは在宅への療養場所の移行,いわゆる退院調整支援である.2つ目として,徹底した入院期間の短縮を目指したがん治療・療養指導の外来化がある.これにより,外来への付き添いなど,家族への患者サポートの期待が大きくなる.3つ目として,ACP (advance care planning)がある.患者と家族間での人生のケア計画をめぐる「意思決定」には対話が必要であり,これはその調整のためのものである.実際,がん臨床では,患者と家族に重要かつさまざまな意思決定が課せられる機会が多く,家族内の合意形成がないと治療方針が定まらないことが起きている.
一方,コロナ禍で病棟から家族の姿が消え,外来で家族とかかわる時間が短くなったことで,「家族がみえない,家族の情報がない」という看護師の戸惑いの声には切実なものがある.そして,今後深刻になる可能性があることが,「(家族とかかわった経験がないため,)家族をどうとらえてよいのかわからない」「(必要性はわかるけど,)うまく家族に声をかけられない」と話す看護師が増え,医療者-家族間でぎくしゃくした関係での“もめごと”が増えることである.
そこで重要になってくるのが,「家族をみつめるメガネを磨き上げて(家族アセスメントの精度を上げて),相手の言動をキャッチする力をつけ,推論をフル活用して事にあたる(対応する)こと」である.
本稿では,家族理解として「家族レジリエンス」を取り上げ,家族の生活経験と歴史を重んじてみつめていくことを解説する.また,家族支援の際の,家族間調整の相互作用(関係性)をみる「円環的思考法」について説明したいと思う.
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