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はじめに
「スピリチュアルケアを学ぼう!」の連載第5回では,援助的コミュニケーションによるスピリチュアルケアを,がん患者への看護師のかかわりを通して解説したい.第5回を読まれるにあたっては,第2回「スピリチュアルケアと対人援助論」と,第3回「スピリチュアルペインを理解する」,第4回「スピリチュアルケアとは何をどうすることなのか」を参照されたい.
今回紹介する援助的コミュニケーションによるスピリチュアルケアであるが,援助的コミュニケーション(反復し,ちょっと待つ)は苦しんでいるがん患者さんの語りを促し,がん患者さんの考えが整い,安心,満足が得られる援助である.しかし,初めて会話記録を読まれる皆さんは,「オウム返しではないのか」「同じ言葉を繰り返して失礼ではないか」「患者さんは不快に思わないのか」と疑問に思われる方もおられるだろう.また,今まで経験したことがないコミュニケーション技法であるため,違和感を覚えるかもしれない.実際に,相手の苦しみに意識を向けて,反復と相手の沈黙を待つことによって,多くの援助者がケアの手ごたえを実感している.第5回を読まれる皆さんには,まず事例を読み,患者さんの苦しみの体験とは何かを読み取っていただき,会話記録からスピリチュアルケアとは何を,どうすることなのかを学んでいただければと思う.
会話記録の1つ目の場面は,看護師の意識が患者の苦しみには向けられず,患者の気持ちへの共感と問題解決法でかかわった場面,2つ目は,患者の苦しみに看護師の意識を向けて,スピリチュアルペインが生じているのではないかとアセスメントし,スピリチュアルケアをしようとかかわる場面である.この2つの場面から,スピリチュアルケアとは,何をどのようにケアするのかを述べていきたい.
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