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症状マネジメントにおける「患者の視点」の重要性
がん患者のさまざまな苦痛症状を軽減するためには,その症状の発生機序を理解して適切な治療やケアを実施しなければならない.そしてその際,常に患者の視点に立った症状マネジメントを行う必要がある.なぜなら「症状」は主観的なものであり,患者自身が感じているものだからである.患者がその症状をどのように感じ,どうしてほしいのか,あるいは患者自身がどう対処しているのかなどを把握したうえで,患者が感じている症状に対して患者の意向に沿った症状マネジメントを行う必要がある.また「症状」が主観的であることをふまえると,症状マネジメントへの患者の参加がマネジメントの行方を左右すると考えられる.患者自身が自分に起きている症状を理解し,どのような治療やケアが必要になるのかを知ったうえで,患者自身も症状マネジメントに参加できるよう支援することが看護師の役割でもある.そのためには症状マネジメントにおける治療やケアに対するインフォームドコンセントが非常に重要になる.
一方,患者の意向のみを優先すると,症状マネジメントに苦慮し,患者の苦痛が増してしまうのではないかと葛藤する場面も出てくる.たとえば,嚥下障害があり誤嚥性肺炎のリスクが高く絶食が望ましいが,患者が食べることを強く希望する場合などである.このような場合には,「倫理的課題」があるととらえ,多職種,そして患者家族も含めて症状マネジメントの方針を検討する必要がある.
本稿では,次項目以降で解説する各症状マネジメントの前提として患者の視点に立ってケアを実践するために忘れてはならない「症状マネジメントにおけるインフォームドコンセントと看護師の役割」「倫理的課題への対応」について述べる.
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