特集 私の看護はこれでいいの? ~若手看護師が苦慮する症状マネジメントのコツ~
【各論】 対応に苦慮する症状のマネジメント
終末期せん妄
知念 正佳
1
Masayoshi CHINEN
1
1静岡県立静岡がんセンター看護部/副看護師長補佐,がん看護専門看護師
pp.329-333
発行日 2023年5月1日
Published Date 2023/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango28_329
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事例紹介
A氏,70代,男性.直腸がん,肝・肺・多発骨転移,腹膜播種の診断を受けている.
病状悪化のため5ヵ月前に抗がん薬治療が中止となり,月に1回程度外来通院しながら自宅で療養生活を送ってきた.しかし,呼吸困難の出現と右側胸部痛の増悪,持続する悪心・嘔吐による経口摂取困難があり当センターを受診したところ,医師より生命予後1ヵ月程度と診断され,苦痛緩和のために緊急入院となった.皮膚と眼球には著明な黄染があり,検査の結果,肺転移の増大,腸管の狭窄,肝不全と腹水の貯留が認められ,胃管留置や酸素マスクによる酸素投与,輸液投与やオキシコドン錠の内服から静脈内注射への投与経路の変更が行われた.また,体動による呼吸困難の増悪があるため,本人の同意を得て尿道留置カテーテルが留置された.
入院後のA氏は,苦痛症状を訴えることなく穏やかに過ごすことができていた.夜間もベンゾジアゼピン系薬剤の投与により入眠していたが,3日目の昼過ぎ頃からそわそわと少し落ち着きがなくなっていた.夕方になり付き添っていた妻の連絡で訪室すると,すでに胃管や尿道留置カテーテルなどを引っぱりながらベッドの上に立ち上がろうとしていた.手元にあった時計を威嚇するように持ち上げると,「ここはどこだ,家に帰らせろ」と語気を強め
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