特集 進行・再発がん患者へのケア
骨転移のある患者のケア ~ADL制限と活動のバランスを取りながら~
黒澤 亮子
1
Akiko KUROSAWA
1
1東邦大学医療センター大森病院看護部緩和ケアセンター専従看護師/がん看護専門看護師
pp.214-218
発行日 2021年3月1日
Published Date 2021/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango26_214
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骨転移患者の特徴,病状進行に伴う生活の支障
近年,骨転移は,すべてのがん腫で出現する可能性があり,骨転移があれば,臨床病期Ⅳ期の進行がんとなる.その背景には,がん治療の進歩によるがん患者の生存期間の延長,がん罹患率の上昇,画像診断技術の発達などがある.骨転移の頻度はがん腫によって異なる.骨転移の多い順でがん腫をみると,①乳がん,②前立腺がん,③甲状腺がん,④肺がん,⑤膀胱がん,⑥腎がん1)である.また,骨転移は血行性に生じる場合が多いと考えられており,転移が起こる部位は,①腰椎,②胸椎,③頸椎,④仙骨の順に多く,四肢骨,とくに末梢骨への転移はきわめてまれ1)である.
骨転移の初期では,無症状の場合も多い.骨転移の症状は,一般的に,疼痛,病的骨折,脊髄圧迫,高カルシウム血症などがあり1),病的骨折,脊髄圧迫,高カルシウム血症では,緊急的対処が必要となる.それらの骨転移の症状が1つでも生じると,患者の日常生活動作(ADL)に多大な支障をきたし,患者のQOLが著しく低下する.とくに,脊髄圧迫に伴う上肢または下肢の麻痺や膀胱直腸障害が出現した場合,緊急的対処が間に合わなければ,麻痺や膀胱直腸障害は改善しない.突然の麻痺や膀胱直腸障害の出現により,これまでなんの支障もなく生活していた日常が一変するため,患者の衝撃は計り知れない.
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