今月の言葉
バランス
pp.5
発行日 1954年12月10日
Published Date 1954/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200853
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子供の頃,体操の時間に,平衡棒というのの上を,両手を拡げ乍ら歩いて渡ることをけいこされたのを覚えている.はたでみていると何でもないようで,さて自分の番になると仲々うまくいかない.全身の重量を片足で支えて,交互に進むわけで,片足で,細い棒の上に立つのが容易でないのだ.全身の重量を片足を中心に,バランスをとらないと,左面に大きくゆれて落ちてしまう.その後は今度,大きく前後にゆれている遊動円木の上を渡るけいこ.これは,前の時のように固定していないで,一定の速さと間隔で動いている円い木の上を,前後左右にバランスをとり乍ら前進するので.更に深い注意と,技術を要する.これが出来れば,大ていの運動種目は大丈夫と自信がつくほどである.
数日前にこんな話をきいた.夫婦のバランスということで,夫と妻の均衡の問題である.まづ最も普通な問題は年令であつて,夫と妻の年令が,どつちにひらきすぎても面白くないということであつた.夫が妻より10年以上も大きいのもよくないし,逆に妻が夫より年長なのも余計困難が多いという.それから,教養のバランスも大きい問題を投げかける.妻が夫についていけない場合は,妻は夫の択けにはならず,相談相手にもなれず,專ら,世話女房で,すませる他ないが,反対に,夫が妻についていけない場合は,凡そ悲劇だ.家庭は円満にいけるわけがない.
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