特集 がん患者に寄り添うコミュニケーション ~事例で学ぶ患者とのかかわりかた~
Ⅱ.コミュニケーションの実際 ~事例編~
治療拒否③ 抗がん薬治療の副作用がつらくて,今後の治療(移植)を拒否しようとしていた白血病患者
紺井 理和
1
1聖路加国際病院看護部/精神看護専門看護師
pp.126-129
発行日 2021年2月15日
Published Date 2021/2/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango26_126
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❁ 事例紹介
Fさん,60代後半,女性.
患者は膠原病で当院通院中であった.血液検査で末梢血にBlast*を認めたため血液内科を紹介受診.骨髄穿刺などの検査をした結果,慢性骨髄性白血病が疑われることを本人と夫に告知.当院での治療を希望され,入院後から分子標的治療薬での治療を開始した.その後,詳細な結果が出て慢性骨髄性白血病急性転化期と判明.分子標的治療薬だけでは治癒がむずかしく造血幹細胞移植が必要だと説明され,数日間悩んだ末に本人が移植を目指した治療に同意.翌日からHyper-CVAD療法を開始した.その後,治療に伴う骨髄抑制により白血球(好中球)減少を認め,38℃台の発熱出現.抗菌薬投与により解熱するが,1週間後に再び38℃台の発熱と下痢・腹痛出現.好中球減少性腸炎との診断で治療開始するが症状は改善せず,患者は「もう耐えられない」,「治療をやめたい」と繰り返すようになった.その様子を見た主治医が患者へ,今後予定している移植はそれ自体リスクがあることに加えて,今よりもっと多様なつらい症状が出ることが予測されるため,移植をやめるという選択肢もあると話をした.その後から患者が抗がん薬治療や移植治療をどうしたらよいのかと悩み始め,誰かと話がしたいと希望されたとのことで話をきくことにした.
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