特集 がん患者に寄り添うコミュニケーション ~事例で学ぶ患者とのかかわりかた~
Ⅱ.コミュニケーションの実際 ~事例編~
治療拒否② 診断時,ステージⅣで治療意欲がまったくなかったがん患者
小野 聡子
1
1札幌医科大学附属病院医療連携福祉センター/がん看護専門看護師
pp.122-125
発行日 2021年2月15日
Published Date 2021/2/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango26_122
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
❁ 事例紹介
Eさん,60代半ば,女性.
排便時痛と出血を痔だと思い放置していたが,1ヵ月で4 kgという体重の急激な低下に別居している娘が気づき,娘の説得で病院を受診した.全身精査で,大腸がんの多発肺・肝転移(ステージⅣ)と診断された.検査結果を一人できき,がん薬物療法(mFOLFOX6+パニツムマブ)が提案されたが,その場で「抗がん薬はしたくはない.治療はいらない」と述べたが,医師が説得し,もう少し考えると一度答えを保留した.翌週もまだ答えが出せないと述べたため,医師が看護相談担当者と面談するように説明し,同意された.次回外来受診時に面談を希望され,診察前に面談することを約束した.主治医からは,治療意欲が低そうだが,治療をしないことの意味が理解できているかが心配であると情報があった.面談日,娘と2人で来られ,Eさんは面談室の椅子に座るが足を深く組み,看護師から身体も顔も背けるような姿勢で,いらだったような表情をしていた.
© Nankodo Co., Ltd., 2021