特集 がん患者に寄り添うコミュニケーション ~事例で学ぶ患者とのかかわりかた~
Ⅱ.コミュニケーションの実際 ~事例編~
治療拒否① 経済的問題のために治療を拒否するようになった乳がん患者
小野 聡子
1
1札幌医科大学附属病院医療連携福祉センター/がん看護専門看護師
pp.118-121
発行日 2021年2月15日
Published Date 2021/2/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango26_118
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❁ 事例紹介
Dさん,50代後半,女性.
6年前に右乳がん(ステージⅠ)と診断され,手術後ホルモン療法[アロマシン®(エキセメスタン)]を継続していた.腫瘍マーカーのCEAが1.8 ng/mLから2.6 ng/mLと上昇し,胸部CT検査で右胸壁に局所再発を認めた.主治医は,アロマターゼ阻害薬からエストロゲン受容体完全拮抗薬へ治療薬の変更を提案した.治療変更について,その場での回答は保留され,2ヵ月悩まれたうえで,患者は治療変更を了解した.初回ホルモン注射[フェソロデックス®(フルベストラント)]を実施したが,2回目の注射に来院されたときに,「注射薬が高くて治療を続けられない.治療をやめたい」と医師に申し出た.既往は,多発性硬化症(30代,寛解維持),不安障害(通院治療中)があった.
主治医より,一度治療に同意をしたかたでもあるため,看護相談担当者に患者の真意を確認してほしいと依頼があった.患者も面談には同意され,別室で面談を行うこととした.
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