連載 スクリーンに見るユースカルチャー・25
説明の拒否
小池 高史
1
1横浜国立大学大学院環境情報学府
pp.847
発行日 2008年9月25日
Published Date 2008/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101022
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ドストエフスキーの『罪と罰』の映画版である。
大作小説を93分の映像に変換しているため,当然映画は,原作からのアレンジとピックアップで構成されている。例えば,物語の舞台はペテルブルグではなくヘルシンキであり,主人公はラスコーリニコフではなくラヒカイネンという名前である(ゆえに日本語版の副題がこう付けられた)。
また,カウリスマキの『罪と罰』の主人公は殺人現場を人に目撃されるが,原作とは違いその人を殺さず,その場で自分が殺人者であると告白する。その後,物語を通じて繰り返されるのは,その目撃者が彼に興味と好意を持ち,なぜ殺したのかと執拗に尋ね続けるシーンであり,頑なに動機を説明しようとしないラヒカイネンの姿である。
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