特集 生活の視点で読み解く! 今日の緩和ケア ~患者になにが起こっているのか~
Ⅴ 動く・体勢を整える
身の置きどころのなさのケア
藤澤 陽子
1
1千葉大学医学部附属病院看護部/がん看護専門看護師
pp.479-481
発行日 2020年6月15日
Published Date 2020/6/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango25_479
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看護師のアセスメント
身の置きどころのなさは,身体,精神,社会,スピリチュアルな側面の複合的な要因から起きることもあり,影響もさまざまなかたちであらわれる.
日常生活への影響としては,英語ではrestlessnessと表現されるように,休息が十分にとれないことが起こりうる.夜間眠れない時間が続くと,より身の置きどころのなさを感じ,さらに睡眠不足により倦怠感などが増強し,日中のつらさが増すという悪循環に陥ることがある.
また,身の置きどころのなさは,心身ともに落ち着かないという状況であり,日々の何気ない行動が億劫になってしまったり,楽しめなくなったりということを引き起こす.対応のむずかしさゆえに,ケア提供者の足が遠のき,不安や孤独感が増すことでさらに身の置きどころのなさを助長させてしまうこともある.
“身の置きどころのなさ”とひとくくりにするのではなく,要因としてどんなことが考えられるのか,そして,その人にとってどんな感覚や影響を起こしているのかを1つひとつ確認する必要がある.そのためには,休息状況,活動状況などの日常生活を観察する,本人にたずねる,家族や多職種からの客観的な見解を分かち合うことも重要となる.また,考えられる原因への治療介入の可能性や対症療法について医師と話し合う.身の置きどころのなさは,死が差し迫っていることを示す徴候の1つとしても挙げられており,症状の改善や病状の見通しなども確認,共有する.
自覚的な感覚に日内変動があるのか,日によって変化があるのか,そこに影響を与える要因として考えられることは何かといった観点から,原因やケアすべきポイントを見つけていけるとよい.
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