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その根拠を探る!
2010年,Temelらの研究によって早期からの緩和ケアの有用性が示された.本研究は「転移を伴う非小細胞肺がんの患者」に対し,標準のケアに加えて早期に緩和ケアを受ける群と標準のケアのみを受ける群に分類し,患者のQOLと心理状態を評価した1).前者は心身の症状に対しとくに注意が払われ,ケアのゴール設定をし,治療に関する意思決定支援,患者個々のニーズに即したケアなどを受けた.すると,早期からの緩和ケアを受けた群は対象群と比較し有意にQOLが高く,また,抑うつ症状を発現した患者が少なく,さらに生存期間の中央値がより長かったことが明らかとなった.また2011年,Temelらは先述と同様の2群間比較において,早期に緩和ケアを受けた群は対照群と比較し,予後についての理解が高く,それが終末期のケアに関する意思決定に影響を与える可能性を示唆している2).2013年には2群の介入内容が比較されており,進行肺がんの患者で,早期からの緩和ケアを受けた場合,標準ケア群に対して,症状への対処,コーピング,医療者との関係性の構築や家族ケアが多かったとされている(図1)3).
一方,臨床試験を分析するCochraneの,進行がんの患者を対象にした研究のレビュー(2017)においては,早期からの緩和ケアは患者のQOLをわずかに向上させ得る,また症状を軽減し得ると示しているが,明確なエビデンスはなく,今後多くの研究が必要とされている4).
わが国においては,沖崎らが国内初の取り組みとして「進行肺がん患者」を対象とした早期からの緩和ケアの有用性を示す研究が実施されているところであり,今後そのエビデンスが示されると考えられる5).
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