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がん医療が年々めざましい進歩を遂げる中,がん看護にはさらなる質の向上が求められています.看護の質向上は実践・研究・教育の三本柱に支えられており,これらは相互に密に影響し合い発展する関係にあります.そのひとつの形が臨床現場における研究成果の活用であり,患者・家族をケアする看護師には研究で得られた新たな知見を実践に反映し,患者・家族に届けることが期待されます.そもそも研究疑問(研究テーマ)は臨床疑問を洗練させながら見出していくため,その結果得られる知見は本来何より臨床現場で役立つはずです.しかし,実際には日常臨床と並行して新たな知見を探したり読み解いたりすることは容易ではなく,研究を縁遠く感じる人は少なくないのが実情ではないでしょうか.
そこで,本特集では臨床に即した最近の研究を例に挙げ,それらの研究結果が何を意味し,どのように実践に適用・還元できるのかを解説します.トピックは診断から治療期における緩和ケアに焦点をあてました.わが国における緩和ケアは,2007年に策定された第1期がん対策推進基本計画の中で「治療の初期段階からの緩和ケアの実施」が掲げられて以降,十年にわたり「重点的に取り組むべき課題」とされてきました.その後,2017年に策定された第3期がん対策推進基本計画でも「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」が「がんとの共生」を目指す中で掲げられています.
このように十年を超えてその実践力が求められ続けている緩和ケアの分野において,一歩進んだ看護実践を行うために,本特集を通じて読者の皆さまが最新の知識を得ること(知識をアップデートすること)ができる内容を目指しました.同時に,研究が臨床現場に役立つことを実感し,今後看護実践の根拠(エビデンス)に関心を寄せられるような機会になれば幸いです.
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