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筋ジストロフィーの独自施策として始まった「進行性筋萎縮症対策要綱(1964年施行)」によって,国立療養所や国立精神・神経センターなどで進行性筋萎縮症病棟(いわゆる筋ジス病棟)が増設され,医療の確保や治療研究,教育,福祉施策など社会的要請に対応した機能整備が行われてきた.並行して,ノーマライゼーションの理念が社会に流れ,「児童福祉法(1947年公布)」や「身体障害者福祉法(1949年制定)」,「老人福祉法等の一部を改正する法律」(福祉八法改正法)による身体障害者福祉法の一部改正(1990年)に伴う居宅生活支援事業の法定化,市町村障害者社会参加促進事業が創設(1995年)され,在宅で生活しやすくするための福祉サービスが拡大し,医療保険と医療機器など(人工呼吸器や吸引器,パルスオキシメーターなど),医療の発展とともに,在宅療養児・者が増加した.一方,高齢者介護を支える「介護保険法(2000年施行)」では一部の難病患者や人工呼吸器装着患者が第2号保険者の対象となり,介護に関連した施策が拡大した.また,「社会福祉士及び介護福祉士法」の一部改正(2012年施行)され,「認定特定行為業務従事者資格」によって,介護職員や教員にも「特定の者」への痰の吸引などの医療的ケアが可能となった.さらに,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(障害者総合支援法)(2013年施行)など,さまざまな法律も整備されることにより,筋ジストロフィーを含む難病や障害をもつ児・者にとって,生活しやすい制度や体制が徐々に進展しているのではないだろうか.難病対策では,筋ジストロフィーが対象となった「難病の患者に対する医療等の法律(2015年施行,以下,難病法と示す)」が施行され,難病との共生社会が謳われている.また,難病法に基づき策定された「難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針(2015年告示)」によって,新たな難病医療提供体制の整備が始まった.新たな難病医療提供体制では,できる限り早期に正しい診断ができる体制,また診断後,より身近な医療機関で適切な医療を受けることができる体制,遺伝子診断等の特殊な検査について倫理的な観点も踏まえつつ幅広く実施できる体制,治療と就学・就労の両立を支援する体制,小児慢性特定疾患児童の移行期医療にあたって小児科と成人診療科が連携する体制を目指している.生活の質(quality of life:QOL)の向上を図る難病の医療と対策について以下に述べる.
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