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鎮痛薬(医療用麻薬)の服薬アドヒアランスの特徴と課題
がん性疼痛は,がん療養の早い時期から体験する頻度が高い症状であり,がん患者のQOLに影響する代表的な症状の1つである.その疼痛を緩和するための薬物療法の選択肢として医療用麻薬がある.しかし,医療者が患者のQOLの向上を願って,効果的に疼痛緩和を行うために医療用麻薬の使用をすすめた際に,患者や家族がそれに抵抗を示す場合がある.その際,医療者は疼痛緩和が遅延してしまうことへの懸念と患者の思いの尊重との狭間で大きなジレンマを抱くのではないだろうか.また,長時間作用型医療用麻薬を服薬する外来通院患者への調査においては,4分の1程度の患者で,処方されたとおりの服薬がされていなかった1)という結果もあることから,疼痛マネジメントにおける患者の服薬アドヒアランスの重要性を痛感する.
医療用麻薬の服薬アドヒアランスを低下させる要因として,医療用麻薬への否定的な考え(誤解や偏見),薬剤の副作用による身体的ダメージ,病状進行のサインとしての疼痛への否認2)といわれている.ほかにも,医療用麻薬への抵抗感の要因として,重要他者(家族やほかの医療者など)が医療用麻薬に反対している3)などもある.
疼痛と医療用麻薬は,それぞれの患者や家族によって,その人なりの意味づけがされる.それは,過去の体験や知っている情報,ありたい自分や希望する生活などと結びつけたり,かかわる人々から影響を受けたりして意味づけられるため,個別性がある.そのため,迅速に疼痛緩和を図り,患者のQOLを高めるには,患者と医療者との信頼関係を構築しながら,その人なりのナラティブから疼痛とその治療の体験の意味を理解し,ケアのプロセスにおいて治療へのアドヒアランスを強化することが必要である.1事例へのかかわりを通して,服薬アドヒアランスの具体的支援について共有したい.
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