特集 【各論】服薬アドヒアランスを高める看護
分子標的治療を受ける患者の服薬アドヒアランス~40代の大腸がん患者の事例~
市川 智里
1
Chisato ICHIKAWA
1
1国立がん研究センター東病院看護部/がん看護専門看護師
pp.551-554
発行日 2019年7月1日
Published Date 2019/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango24_551
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分子標的治療を受ける患者の服薬アドヒアランスの特徴と課題
近年,分子標的治療薬の開発は著しく,入院が主流であったがん薬物療法の治療の場は外来へ移行している.その結果,患者は医療者と接する機会が減少し,患者や家族が自ら内服管理や副作用症状のマネジメントを実施することが求められている.服薬アドヒアランスが低下すると,治療効果が得られず,病状の悪化や副作用症状により患者の苦痛が増強し,そのための新たな治療を要し,患者のQOLが低下する.さらに,医療経済にも影響を及ぼし,悪循環を引き起こす可能性がある.
また,分子標的治療薬は高い効果を示すことが期待される一方で,その薬剤に特徴的な副作用症状を有し,かつ,副作用症状は多様化している.それと同時に,多剤併用レジメンも増えていることから症状が複雑化することもあり,場合によっては生命の危機に陥るような深刻な状況にいたることもある.そのため,医師や看護師,薬剤師など,さまざまな医療者がチーム医療を実践し,患者の治療効果を最大限に発揮し,副作用症状を最小限にとどめることが必要とされる.
さらに,最近では,高齢者のみならず,働き盛り世代やAYA世代のがん患者も増加しており,患者の生活やQOL等,全人的にとらえて支援することが求められる.そのため,分子標的治療薬の特徴を理解し,患者の服薬アドヒアランスを高め,患者の生活や社会での役割を果たすことができるような支援やかかわりが重要である.
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