連載 在宅で必要なクスリの知識と服薬のコツ・13
麻薬
藤澤 節子
1
1ひまわり薬局
pp.337-341
発行日 2003年4月1日
Published Date 2003/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100664
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死を迎える
30数年前の小雪舞う朝に,私の母は1年間のがんとの闘病の末,この世を去りました。最後の2か月間は,白い病室の中で,麻薬の注射を打ちながらの痛みとの戦いでした。現在,私が在宅中心で医療活動を続けている原点は母の死にあります。可能であるならば,人は最期の時を,住み慣れた我が家で,愛する人々に囲まれて,安らかに迎えたいと願うのではないでしょうか。私が出会った,がんの末期で,残された時間が限られた患者さんの多くは,できるだけ苦しまずに,痛まずに在宅で死を迎えることを望まれました。死の恐怖と痛みへの不安など,在宅でのターミナル・ケアは多くの問題点を抱えておりますが,私は麻薬の上手な使い方によって,もっと安楽な死への旅立ちをお手伝いできるものと信じています。
母が亡くなった時代から時は流れ,麻薬も在宅での疼痛管理が十分に行なえるほどに進歩しました。速放薬から,12時間ごとに服用する徐放錠,24時間おきに服用するペレット(粒剤),また昨年春には72時間おきに貼りかえる経皮吸収型のパッチが販売されました。その他,筋注,静注,持続点滴,直腸投与など,在宅医療において,医療・介護にかかわるスタッフが,麻薬の正しい知識を身につけて,残された患者さんの大切な時間を,ほんの少しでも快適に過ごせるように手助けして欲しいと思います。
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