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は じ め に
脊柱側弯症は脳性麻痺(cerebral palsy:CP)の患児には一般的であり,全体的な発生率は15~80%とされている1)が,この発生率は神経学的関与の程度と重症度によって異なる2).特に進行性脊柱側弯症は,gross motor function classification system(GMFCS)level ⅣまたはⅤの重度非歩行患者の64~74%に発生することが報告されている3~5).より高いGMFCSレベルは側弯発症の重大な危険因子であると同時に,10歳以前のより低年齢に発症する側弯症ではもっとも強く関連する進行要因である1).その結果,早期発症型側弯症(early onset scoliosis:EOS)として積極的な治療が行われるが,骨格の成熟に達した後でも非外科的治療に関係なく進行する.この進行性の側弯変形は,さらなる運動機能障害,座位や移動の問題,肺機能低下,健康関連の生活の質(health related quality of life:HRQOL)の低下を引き起こす.
CPの側弯には二つの異なる変形パターンがあり,骨盤傾斜が少ないダブルカーブと骨盤傾斜を伴うシングルカーブがある.シングルカーブである “long C curve” の胸腰椎側弯は,しばしば重度の骨盤傾斜と座位困難をきたす.脊柱側弯症は肋骨と骨盤のインピンジメントによる痛みや,不良座位バランスによる坐骨結節や大転子の圧力集中部位に痛みを引き起こすことがあり,心肺機能および胃腸機能にも影響を及ぼす.すなわち,側弯症と骨盤傾斜が進行性の症状と機能障害を引き起こすことになる.この点を考慮し,側弯矯正手術は心肺機能および座位バランスの機能低下を防ぎ,痛みを軽減させるために重症および進行性側弯症の症例が適応となる.
最近,最新の手術技術とインストゥルメンテーションを使用したCPの脊柱変形に対する矯正手術により,術後に高い満足度が得られることが多く報告されている5,6).一方,予想よりも少ない矯正,重度の側弯の残留,術後の腰椎過前弯および術後後期の合併症に対する満足度の低さも指摘されている5,7,8).CPに対する脊柱矯正手術は側弯の進行を止め,骨盤傾斜の水平化を図り,良好な冠状面および矢状面アライメントを達成したうえで,患者のHRQOLを改善することを目的に行われる.これまでもHRQOLの改善という点で手術本来の利点が議論されてきたが,手術が効果的であるためには手術リスクを上回るHRQOLの実質的な長期間の改善を提供する必要がある.
これらを考慮したone-way self-expanding rod[OWSER(NEMOST:EUROS社)]と経皮的腸仙骨スクリューを用いた腸仙骨固定法(TANIT:EUROS社)を併用した手術法がフランスで開発され9),CPを含む神経筋性側弯症におけるEOSに積極的に臨床応用がされるようになった9,10).OWSERは身長の伸延とともに自動的にロッドが延長するため繰り返し手術を行う必要がなく,最終固定術も必要としない.また,TANITは非透視下で経皮的に腸仙骨スクリューを挿入して腸仙骨を固定する方法である11,12).この併用方法は低侵襲で変形矯正ができ,周術期合併症も少なく,強固な固定のため術後に日常生活動作(ADL)やHRQOLの改善が早期に得られ,かつ長期間維持ができ,そのうえ遺残する変形も生活動作や牽引などにより矯正できる可能性を有する9,10).
OWSERは国内での使用が未承認のため患者,家族からの同意,倫理委員会からの承認(2018-99-32)のもと手術を行い,術後短期間であるが,その有効性と合併症について検証したので報告する.
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