Japanese
English
成人股関節疾患の診断と治療 Ⅱ.治療
3.人工股関節全置換術
2)セメント人工股関節
セメント人工股関節全置換術の現状と今後の課題
Revisiting of cemented total hip arthroplasty:current evidence and future perspectives
小林 史朋
1
,
䯨 賢一
1
,
寒川 翔平
1
,
中村 知寿
1
,
齋藤 貴徳
1
F. Kobayashi
1
,
K. Oe
1
,
S. Sogawa
1
,
T. Nakamura
1
,
T. Saito
1
1関西医科大学整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Kansai Medical University, Hirakata
キーワード:
cemented THA
,
surgical technique
,
bone cement
,
polished taper stem
Keyword:
cemented THA
,
surgical technique
,
bone cement
,
polished taper stem
pp.102-106
発行日 2025年10月20日
Published Date 2025/10/20
DOI https://doi.org/10.15106/j_besei88_102
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は じ め に
セメント人工股関節全置換術(THA)は,長年にわたり臨床において用いられてきた信頼性の高い術式である.これはSir John Charnleyによってlow friction arthroplasty(LFA)として開発され1),以降半世紀以上にわたり,手技やインプラントの改良が積み重ねられてきた.現在でも,CharnleyのLFAの基本原理は継承され,セメントTHAの手技およびインプラントはほぼ確立されたものになっている.しかし,近年では骨セメントを使用しないセメントレスTHAが世界的潮流であり,本邦のレジストリによれば2022年度の初回THAにおける骨セメント使用率は寛骨臼側で約5.7%,大腿骨側で約16.8%と報告されている2).
一方,75歳以上の高齢者や骨脆弱性を有する症例に対して,セメントレスTHAにおける大腿骨ステム周囲骨折や早期のインプラント弛みが指摘されており,再置換率が低く安定した成績を示すセメントTHAの有用性が再評価されているが3),その技術を習得する機会が若手術者の間で減少していることも問題となっている.セメントテクニックを十分に習得していない術者が増加すれば,今後適応のある症例に対してセメントTHAが提供できなくなる懸念もある.
本稿では,セメントTHAの適応と利点,セメントテクニックの重要なポイント,さらにインプラント選択の課題について,最近の知見を交えながら解説する.

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