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は じ め に
変形性膝関節症(膝OA)は,加齢などによる関節軟骨の変性・摩耗から関節の変形を生じ,膝関節痛や日常生活動作(ADL)の低下をもたらす疾患である.超高齢社会であるわが国の膝OA有病者は2,500万人以上と想定されているが,今後20年の間に高齢者人口とともに膝OA患者も増加することが予測されている1).
初期膝OAの治療には患者教育や運動療法,薬物療法といった保存的治療が行われるが,進行期から末期例には人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:TKA)が適応となる.
初回TKAはわが国では年間8万例以上が施行されているが,近年は初回TKAの適応の若年化や平均寿命の延伸とともに再置換術も増加し,また手術手技の向上とともに,骨・軟骨欠損や高度の内・外反変形を伴った膝OAに対するTKAも行われている.
膝関節外変形は変形部位が大腿骨遠位骨端線より近位,もしくは腓骨頚部より遠位と定義されており,その原因としては骨折後の変形治癒や偽関節,脆弱性骨折,膝周囲骨切り術後と,骨形成不全症による骨の弯曲変形と菲薄化,Blount病による脛骨近位の内反,くる病や甲状腺機能亢進症による骨質異常に伴う変形,さらには骨腫瘍やPaget病などがある2,3).
関節外変形を伴った膝OAに対する手術は,冠状面,矢状面,水平面のそれぞれで下肢アライメント異常を評価し,関節機能の再建とアライメント矯正がTKA単独で可能か,骨切り術の併用が必要かを検討することが重要である.一般的に,TKAのみでは水平面の回旋アライメントに対する大きな矯正は困難であることから,著明な回旋変形にはまず矯正骨切り術を行い,二期的にTKAを行うことが推奨される3).
冠状面での変形の評価は,まず変形の中心(center of rotation of angulation:CORA)を同定し,膝関節面との位置関係を確認する.そして関節面から骨幹端部よりCORAのほうが離れており,大腿骨の変形が20°未満,もしくは脛骨の変形が30°未満であれば,TKAのみで矯正可能と考えられている.また,大腿骨遠位および脛骨近位骨切りラインと内側・外側側副靱帯の付着部との位置関係に注意が必要である.大腿骨では骨切りラインが関節面より25mm以内であれば側副靱帯は温存できる3,4).
大腿骨遠位骨切りは,従来法では髄内ロッドを用いて行う.しかし,大腿骨骨軸の著明な弯曲変形によって髄内ロッドが挿入できない症例では,正確な骨切りが困難である.そこで,コンピュータナビゲーションシステムやpatient-specific instrumentsによる骨切りが試みられるが,システムの導入費用や骨切りガイドの作製期間がかかる点が問題である.これに対しポータブルナビゲーションシステムは安価で,複数社のインプラントに対応し,また従来のナビゲーションシステムと比較しても冠状面・矢状面での正確性が同等であることから,有用な選択肢として注目されている5).
脛骨近位骨切りは従来法では髄外ロッドを用いて行うことが多いため,骨軸の変形が著明な症例でも対応可能である.しかし,高度な変形膝では本来の関節面の同定が困難な場合や,骨欠損や関節不安定性を伴っていることがあり,骨切りラインの検討やインプラントの選択,金属補塡材の準備を含めた術前検討が必要である.
これらに対しロボティクスを用いたrobotic TKA(RTKA)は,アライメントロッドが不要で,軟部組織バランスを考慮しながら正確な骨切りが可能であることから注目されている.そこで,関節外変形を伴った高度内反変形に対するRTKAの使用について概説する.
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