Japanese
English
骨・関節感染症の治療戦略 Ⅴ.治療各論
1.化膿性関節炎の治療
化膿性膝関節炎に対する広範囲関節鏡視下デブリドマンと後方留置オープンドレナージの有用性
Efficacy of wide arthroscopic débridement with open posterior drainage in septic knee arthritis
関矢 仁
1
,
高徳 賢三
1
,
久保 達也
1
,
齊藤 寿大
1
,
大上 仁志
1
H. Sekiya
1
,
K. Takatoku
1
,
T. Kubo
1
,
T. Saito
1
,
H. Okami
1
1新上三川病院
1Dept. of Orthop. Surg., Shin-Kaminokawa Hospital, Tochigi
キーワード:
septic knee arthritis
,
posterior drainage
,
arthroscopic débridement
Keyword:
septic knee arthritis
,
posterior drainage
,
arthroscopic débridement
pp.130-135
発行日 2022年4月25日
Published Date 2022/4/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_besei81_130
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
は じ め に
化膿性膝関節炎は短期間に関節軟骨などを破壊し,膝関節機能を著しく低下させる病態であり,緊急に適切な対処が迫られる.治療としては,適切な抗菌薬の使用に加え,十分な滑膜切除と確実なドレナージが必須である.滑膜切除は従来,関節切開により行われたが,システマティックレビューでは関節鏡視下のほうが,関節切開よりもリスクが少なく,再手術率も少ないと報告され1),近年では関節鏡視下に行われることが多い.しかし,後方関節腔を含めた滑膜切除は,神経血管損傷の危険性もあり比較的困難な処置と考えられている2~5).加えて,排液のために関節腔に挿入するドレナージは通常,関節腔の前方部分に挿入されるため,重力のために後方に貯留しやすい関節液の排液には不利である6,7).また,前方のドレナージは膝蓋大腿関節や大腿脛骨関節に挾まれやすいために可動域訓練や歩行訓練は困難である場合もあり,関節拘縮の発生も危惧される.
われわれは,通常の膝蓋下外側・内側ポータルに加え,近位内側,後内側,後外側ポータルを加えた5ポータルより後方関節腔を含めた広範囲関節鏡視下デブリドマン(広範囲ASデブリ)を行い,後内側ポータルから後方中隔を貫通して後外側ポータルに連続する後方留置オープンドレナージ(後方ドレナージ)を行うことで効果的な排液が可能となり,ドレーン留置中も歩行可能で,かつ良好な成績を得ることができたので報告する.
© Nankodo Co., Ltd., 2022