人工膝関節全置換術後のひざまずき能力の経時的変化と皮切の違いによる影響

Changes and the effects of different skin incisions in kneeling ability after total knee arthroplasty

は じ め に

　人工膝関節全置換術（TKA）は末期変形性膝関節症に対する根治的な外科的治療である．TKA後は多くの患者で満足が得られるが，ひざまずき動作（kneeling）が困難な症例では患者満足度が低下するといわれており^1），特にアジア人では日常生活において宗教的，文化的にもkneelingが必要になることが多い^2）．TKA後数ヵ月～数年においても50～80％の症例でkneelingが困難との報告があり^3～5），解決すべき課題である．Kneelingが困難となる原因としては，創部が床に直接接触することや伏在神経膝蓋下枝の損傷による感覚障害があげられる^6）．従来の正中切開では，脛骨粗面部に皮膚切開（以下，皮切）が存在し，この粗面部において伏在神経膝蓋下枝を損傷する可能性が高い．

　われわれは，皮切の遠位部を外側にカーブさせる新皮切（以下，カーブ皮切）を導入した．カーブ皮切と従来の正中皮切によるTKA後のkneelingの困難度，疼痛の違いとその経時的変化を調査したので報告する．