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は じ め に
変形性膝関節症(osteoarthritis:OA)は,膝関節の痛みや可動域(ROM)制限を生じることにより高齢者を中心に日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)の著しい低下をもたらす疾患である.近年はその発症予防の観点から構造学的な破綻を生じる前段階として早期膝OAという概念が注目されている.これは膝の痛みを中心とした膝症状があり,かつ関節裂隙狭小化や骨棘形成などの単純X線像上の変化を認めないことを特徴としている2,3).
膝OAは関節軟骨の変性を特徴とした疾患であるが,ほかにも滑膜炎や半月板病変など関節全体に影響を与える病態4)であり,骨棘形成や軟骨下骨硬化など骨組織にも変化を生じうる.MRIで検出される骨髄病変(bone marrow lesion:BML)は軟骨下骨にT2脂肪抑制あるいはshort-tau inversion recovery(STIR)像で高信号に描出される病変であり,膝OA患者の疼痛と関連することが報告されている5).一方ではBMLの病理組織像に関しては微小骨折,浮腫,出血が混在するという報告6)があり,その病態や詳細なメカニズムに関してはいまも議論となっている.
一方で骨粗鬆症は高齢女性で好発するという点では膝OAと共通した疾患であるが,その診断基準として用いられる骨密度と膝OAの関連には種々の報告を認める.過去の研究の多くは骨密度高値と膝OA発生が関連するなど正の関連を報告したものが散見される7~9)が,ある研究では骨密度高値が膝OA進行リスク減少に働くなど逆の関連を報告したもの10)や,骨密度測定部位により膝OAとの関連が異なる11)とする報告もあり,その関連についてはいまだ不明な点も多いのが現状である.近年では,骨粗鬆症治療薬が膝OA患者でのBMLおよび膝痛の改善に寄与するという報告12)もあり,骨脆弱性とBML発生の関連が想定されるが,早期膝OAにおけるBMLの発生要因を調査した研究は少ない.本研究の目的は地域一般住民女性から早期膝OAの対象を抽出し,BML発生と骨密度および骨代謝マーカーとの関連を調査することである.
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