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特集 整形外科画像診断・評価の進歩
Ⅲ.MRI
9.早期変形性膝関節症におけるMRI所見
Magnetic resonance imaging findings in early knee osteoarthritis
石橋 恭太
1
,
佐々木 英嗣
1
,
太田 聖也
1
,
千葉 大輔
1
,
石橋 恭之
1
K. Ishibashi
1
,
E. Sasaki
1
,
S. Ota
1
,
D. Chiba
1
,
Y. Ishibashi
1
1弘前大学大学院整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Hirosaki University Graduate School of Medicine, Hirosaki
キーワード:
early knee osteoarthritis
,
synovitis
,
bone marrow lesions
Keyword:
early knee osteoarthritis
,
synovitis
,
bone marrow lesions
pp.617-621
発行日 2022年5月25日
Published Date 2022/5/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei73_617
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は じ め に
変形性膝関節症(膝OA)の重症度判定には単純X線像を用いたKellgren-Lawrence(KL)分類が一般的であり,grade 2以上でX線学的膝OAと分類される1).しかしながらX線学的膝OAの段階では不可逆性の構造変化をきたしており,現状では膝OAにおける構造変化を抑制する根本的な治療はないことから,より早期の診断,治療が重要と考えられている.
早期膝OAの定義については明確なコンセンサスは得られていないが,Luytenらが2017年の国際ワークショップで提唱した診断基準が最近では多く使用されている.その診断基準は(A)患者立脚型質問表[Knee injury and Osteoarthritis Outcome Score(KOOS)で二つ以上の下位尺度で85%未満の場合],(B)臨床所見(関節裂隙の圧痛または轢音),(C)単純X線所見(KL分類 grade 0/1)の三つからなる2).われわれは本診断基準をもとに,疫学調査で地域一般住民における早期膝OAの有病率を調査した3).全体での有病率は男性では9.5%,女性では15.0%であり,50歳代女性では20.3%ともっとも高値を示し,そのリスク因子としては加齢,女性,肥満,膝外傷歴とX線学的膝OAと同様のリスクが検出された.今後予防的介入による有効性検証が期待されるが,早期膝OAに関しては病態解明が十分になされておらず,適切な予防介入を行ううえでも早期膝OAの病態を正しく理解することは必須である.そこで本稿では,早期膝OAのMRI所見について概説するとともに,筆者らが行ってきた地域住民検診から得られた研究結果を紹介する.
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