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は じ め に
内側型変形性膝関節症(内側型膝OA)に対する膝周囲骨切り術(AKO)は,1950年代から発展してきた.内側開大式高位脛骨骨切り術(MOWHTO)は,1951年ごろよりDebeyreら1)により始まり,当初はTプレートによる内固定と開大部への腸骨移植が必要であったため,普及しなかった.その後,金属スペーサーつきのPudduプレートも考案されたが,高頻度の骨癒合不全が報告されている2).
外側閉鎖式高位脛骨骨切り術(LCWHTO)は,1960年代よりCoventryら3)によって始まった.種々のステープルやブレードプレートが考案されたが,ギプス固定を要することが多かった.
外反膝に伴う外側型変形性膝関節症(外側型膝OA)に対する大腿骨遠位内側閉鎖式骨切り術(MCWDFO)は1988年にHealyら4)により良好な成績が報告されている.
2003年にStaubli,Lobenhofferら5)により開発されたロッキング機能を有するTomofixプレートの出現によりMOWHTOは早期荷重が可能で,矯正損失もなく,高い骨癒合率,開大部には骨や人工骨の移植不要と多くの利点があり,急速に普及したが,矯正角度に限界があることと,術後の膝蓋骨の低位化が膝蓋大腿関節症の増悪を招く懸念があることから,Takeuchiらのhybrid 閉鎖式脛骨骨切り術(HCWHTO)6)やGaasbeekらの内側開大式粗面下骨切り術(OWDTO)さらには,Akiyamaら7)のArc-OWDTOなども考案され,膝蓋大腿関節症を有するような膝においても関節温存可能な方法も近年では普及してきた.
一方で,わが国には,長崎で開発,発展を遂げてきた脛骨顆外反骨切り術(TCVO)8)があり,進行した内側型OA膝に対する関節温存手術として注目されている.
このようにAKOは歴史上,さまざまな方法が考案され,発展を遂げてきたが,骨切り方法による長所や短所,特性や難易度が存在するため,その骨切り方法の決定は術者の経験や技量で決まることも多く,どの骨切り術をどのように用いるかの議論は十分ではない.
従来の骨シンチグラフィは,骨代謝の活動性を調べることが可能で,臨床的にはがんの骨転移,骨壊死,疲労骨折,OAの診断やAKOの効果判定に用いられてきた9,10).骨シンチグラフィの膝OAに対する活用に関しては,単純X線像の撮影およびMRI,疼痛に相関するとの報告もある10).近年はsingle-photon-emission computed tomography(SPECT)に従来のCTを組み合わせることで(SPECT/CT),骨シンチグラフィに比べ,膝蓋大腿関節の評価も可能で10,11),そのような理由で,骨切り方法の決定に利用することは非常に有用と考える.
筆者は2014年にドイツ,HannoverのLobenhoffer教授12)のもとに留学し,AKOの理論,double level osteotomy(DLO)などの手術技術を学び,帰国後はSPECT/CTを骨切り方法の決定に利用してきた.本稿では,そのような経験をふまえ,現在行っているSPECT/CTと変形解析を参考にした手術適応の実際を紹介したい.
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