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は じ め に
関節リウマチ(RA)は人口の0.2~0.5%が発症し,また男女比は約1:3であると報告されている1).本邦においては,60歳代の発症がもっとも多く,70歳代の発症も増加傾向である2).RAは発症早期から関節破壊が認められることから,早期診断・早期治療がもっとも重要である.近年では,生物学的製剤やヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬の登場により,RAの病勢のコントロールは劇的に変化している3).そのため,多くのRA患者の関節破壊を遅らせることが可能となり,人工関節置換術が必要となる患者数は減少している4).また,RAの病勢のコントロールが良好な患者において,関節温存をめざした手術療法も選択されるようになっている5,6).
RA患者の膝関節痛において,RAの滑膜炎に伴う単関節炎の所見か,関節内構造体の損傷に伴う所見かの鑑別が重要となる.RAの滑膜炎に伴う単関節炎であれば,RAの病勢のコントロールや関節鏡下滑膜切除術が適応となる場合がある.一方で,関節内構造体の損傷に伴う関節痛であれば,その原因によって早期に修復術や再建術が必要となる.しかし,半月板は線維軟骨を主体とする軟骨組織であり,RAにおいて関節軟骨と同様に関節破壊の標的となる.RA患者の滑膜炎では,軟骨よりも半月板変性のほうが先に進行する報告もあり7),RA患者における半月板修復術の適応は一定の見解が得られていない.
内側半月板後根断裂(MMPRT)は,内側半月板の後方脛骨付着部における断裂であり,50歳代~70歳代の中高年で発症することが多く,また男女比は約1:4であると報告されている8,9).MMPRTは半月板の逸脱をはじめとする内側半月板の機能不全を引き起こし,膝関節軟骨の接触圧を内側半月板全切除と同等にまで増大させることが知られている.近年,MMPRTの10年経過観察された保存療法の長期成績において,保存療法の失敗率は95%であったことが報告され,修復術の重要性が再認識されている10).また,当科において,MMPRTに対してプルアウト修復術を行うことで,中期的に良好な臨床成績が得られ,術後3年にかけて経時的に臨床スコアの改善も得られることを報告している11,12).
RAとMMPRTの発症年齢や男女比などはかなり類似しており,RA患者においてもMMPRTを発症することがある.また,RAの滑膜炎に伴う半月板変性により,MMPRTの発症リスクはより高い可能性がある.しかしながら,これまでにRA患者におけるMMPRTに関しての報告はほとんどされていない.そのため本稿では,RA患者におけるMMPRTの特徴や治療経過を調査することを目的とした.
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