Japanese
English
しびれ・痛みに対する整形外科診療の進歩 Ⅰ.総 論
2.理学療法
成人脊柱変形に対するノルディックウォーキングの有用性
Efficacy of nordic walking for adult spinal deformity
平尾 雄二郎
1
,
久野木 順一
2
,
大西 惟貴
2
,
河村 直洋
2
Y. Hirao
1
,
J. Kunogi
2
,
Y. Onishi
2
,
N. Kawamura
2
1都立広尾病院整形外科
2日本赤十字社医療センター脊椎整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Tokyo Metropolitan Hiroo Hospital, Tokyo
キーワード:
ASD
,
nordic walking
,
sagittal alignment
Keyword:
ASD
,
nordic walking
,
sagittal alignment
pp.50-53
発行日 2018年10月30日
Published Date 2018/10/30
DOI https://doi.org/10.15106/j_besei74_50
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は じ め に
2本のポールを用いて歩行運動を行うノルディックウォーキング(NW)は,上半身の筋肉を動員することにより有酸素性の全身運動を促すことができ,1930年ごろにフィンランドでクロスカントリー選手のオフシーズンの体力維持・強化のためのトレーニングとして始まった.フィンランドでは世界でもっとも早く高齢化社会を迎えたという背景があり,高齢者の健康維持・増進の手段としてこの運動が注目されるようになり,広く普及していった.この歩行形式は高齢者のフレイル(虚弱)に対する運動機能改善効果が高く1),また心疾患,慢性閉塞性肺疾患,脳梗塞,末梢動脈疾患,糖尿病,パーキンソン病,認知症,変形性股関節症,変形性膝関節症など,高齢者が罹患する幅広い疾患において治療・リハビリテーション(リハビリ)効果が報告されている2~7).
一方,今回の主題である成人脊柱変形(adult spinal deformity:ASD)は腰背部痛,姿勢異常,歩行障害によりhealth-related quality of life(HR-QOL)の障害をきたし,生命予後を悪化させる要因となることが近年のさまざまな報告8)で明らかになっているものの,有効な予防法や保存的治療についての報告は少ない.われわれは,2015年よりASDに対する保存的治療や術前後の運動療法としてNWを導入し,脊柱アライメント,歩行能力,腰痛,QOLなどに及ぼす効果について検討を行っている.
本稿では整形外科領域の運動器不安定症におけるNWの適応疾患や期待できる効果について述べた後,ASDに対するNWの効果を検討したわれわれの研究について報告する.
© Nankodo Co., Ltd., 2018