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はじめに
近年の超高齢化社会において,成人脊柱変形(adult spinal deformity:ASD)に対する治療は脊椎外科医にとって避けては通れない領域となりつつある.冠状面より矢状面の脊柱アライメント不良がactivity of daily living(ADL),quality of life(QOL)の低下を招くことが諸家の報告により示され,さらにASDとhealth-related quality of life(HRQOL)の関係を検討して作成されたScoliosis Research Society(SRS)-Schwab分類の報告により,手術治療における一つの目標値が提唱された5,7,11).このような背景から,これまで以上に多くの脊椎外科医がASDに対する手術治療に取り組むようになってきた.また,2013年にlateral lumbar interbody fusion(LLIF)が本邦に導入されたことにより,従来の多椎間posterior lumbar interbody fusion(PLIF),多椎間transforaminal lumbar interbody fusion(TLIF)やそれに骨切り術を併用した後方法のみによるASD矯正手術と比較して手術侵襲を低減化することが可能となったことも,本疾患に対する手術治療が増加した要因と考えられる.当教室では2013年5月からASDに対してLLIFを導入した.導入初期の頃はLLIFと併用する後方法は開創によりpedicle screwを挿入し,一部の症例ではPonte骨切り術を併用して矯正を行ってきた10).その後,徐々に後方手術手技を低侵襲化の方向へ発展させ,現在ではde novo変性後側弯症に対しては全例,二次性変形に対しても椎間関節が骨癒合している症例以外はほぼ全例においてLLIFとall percutaneous pedicle screw(PPS)によって良好な矯正が可能となっている6).現在,ASDに対して広く行われているLLIFとall PPSによる矯正固定術も,そのほとんどは下位胸椎から骨盤までの固定を必要とする.このようなlong segment fusionによって良好なアライメントが得られる一方,その欠点として脊柱前屈制限によるADL障害は否めない.そこで,当教室では2018年3月からanterior column realignment(ACR)を導入し,これによりASDに対する矯正をshort segment fusionで達成するよう試みている.本稿は当教室での経験に基づいて,ACRを安全に行うにあたっての術前計画,前弯形成のコツ,よい適応,今後の展望について述べたい.
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