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は じ め に
慢性腰痛患者は非常に多く,平成28年国民生活基礎調査における日本人の有訴者率では男性で1位(9.18%),女性では肩こりに次ぐ2位(11.55%)である1).また,ロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)は,「運動器の障害のため移動機能の低下をきたした状態で,進行すると介護が必要となるリスクが高まるもの」と日本整形外科学会は定義しており,その主な原因の一つに慢性腰痛があげられている2).ロコモと腰痛に関しては,一般住民を対象とした大規模調査が行われ,その関連性が示されている3,4).しかしながら,腹部体幹筋力とロコモや腰痛との関連性については明らかにされていないのが現状である.
慢性腰痛に対する運動療法は有効な治療法であり5),体幹筋力強化を含む運動が有効であるとの報告もあるが6),一般的にアドヒアランスが低く有効な治療法として広く認知・利用されていないのが現状である.ロコモの予防および治療においても,もっとも有効なものは運動療法であり,日本整形外科学会はロコトレ(ロコモーショントレーニング)を推奨している7).
われわれは,慢性腰痛患者に適した腹部体幹筋力の測定とトレーニングを両立させた運動器具を開発した(図1,日本シグマックス社,金沢大学整形外科との共同開発).この器具を用いたトレーニングにより,腹直筋や腹斜筋だけでなく腹横筋,横隔膜,骨盤底筋にも強い筋活動が生じ,これらの腹部体幹筋群の等尺性筋収縮により発揮される筋力がこの器具を用いて数値化され,測定できることが先行研究で示されている8).本研究の目的は,中高齢女性に対して,この器具を用いて腹部体幹筋力を測定し,腹部体幹筋力とロコモおよび腰痛との関連性を明らかにすることである.
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