Japanese
English
しびれ・痛みに対する整形外科診療の進歩 Ⅱ.疾患・病態別の診断・治療
2.腰椎
脊髄係留症候群による腰下肢痛
Back pain and lower limb pain of tethered cord syndrome
原 毅
1
,
岩室 宏一
1
,
下地 一彰
1
,
尾原 裕康
1
,
宮嶋 雅一
1
,
新井 一
1
T. Hara
1
,
H. Iwamuro
1
,
K. Shimoji
1
,
Y. Ohara
1
,
M. Miyajima
1
,
H. Arai
1
1順天堂大学脳神経外科
1Dept. of Neurosurgery, Juntendo University, Tokyo
キーワード:
tethered cord syndrome
,
back and lower limb pain
Keyword:
tethered cord syndrome
,
back and lower limb pain
pp.136-140
発行日 2018年10月30日
Published Date 2018/10/30
DOI https://doi.org/10.15106/j_besei74_136
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は じ め に
脊髄係留症候群は,潜在性二分脊椎により脊髄尾側端が胎生期の位置につなぎ止められ脊髄尾側が伸展することにより生じる脊髄障害で,脊髄尾側が種々の原因により係留されることで,髄内にさまざまな脊髄障害を引き起こすような機序が働くとされている.臨床症状は下肢筋力低下,膀胱直腸障害,下肢から会陰部の感覚障害などの脊髄円錐部を中心とした領域に一致する脊髄症状が出現し,ADLを低下させ日常生活に影響を及ぼしうる.脊髄係留症候群の症状のなかでも,腰痛および下肢痛は主に成人に多く発生し,係留解除術により高い改善率が期待できる症状である.一方で,膀胱直腸障害など出現してしまうと回復が困難な症状も存在するため,このような症状が出現する前に治療を行う必要がある.しかしながら,実臨床においては脊髄係留症候群の疾患概念自体が臨床家の間で浸透しているとはいいがたく,発症より長年経過し脊髄症状の増悪が認められてからはじめて診断,治療が行われる症例も少なくない.
本項では脊髄係留症候群による腰痛,下肢痛患者の自験例の分析を行い,文献的検討を加えたうえで早期診断のために必要な事項と問題点について記載する.
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