発行日 2014年9月1日
Published Date 2014/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2015034371
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症例は89歳女性で、進行性の両側難聴を自覚し受診したが、加齢に伴うものとして経過観察された。発熱、食欲不振を認め、抗菌療法がなされたが症状は改善せず血液検査でCRP 7.0mg/dLと炎症反応上昇を認め入院した。頸部リンパ節は触知せず、明らかな甲状腺腫大や項部硬直は認めなかった。口腔内は左頬粘膜に発赤を認めたが咽頭に発赤・腫脹はみられなかった。呼吸音は明らかなラ音は聴取しないが、心音は頻ながら左第2肋間で収縮期駆出性雑音・心尖部で拡張期雑音を聴取した。腹部は平坦・軟で圧痛なく正常腸雑音を聴取した。下腿に浮腫は認めず、胸部単純X線でCTR 50.8%で心陰影拡大はなく肺野に異常はみられなかった。心電図は正常洞調律、脈拍97/分、左室肥大のほか異常なく、心エコーで左室壁運動異常はなく収縮力は良好に保たれていた。胸部CTで肺胞出血は認めず、気管支鏡で気管支粘膜に一部毛細血管拡張を認めたが明らかな出血や膿性痰はみられなかった。バイタルサインはSIRS基準中、発熱、脈拍の2項目が該当し、胸腹部CTを施行したが発熱原因となる感染症や悪性腫瘍は認めず、尿蛋白・尿潜血陽性よりANCA関連血管炎を疑った。聴力検査で感音性難聴と滲出性中耳炎を認め、顕微鏡的多発血管炎(MPA)に伴う発熱、中耳炎、感音性難聴と診断した。副腎皮質ステロイド投与により発熱、CRP、抗好中球細胞質抗体(MPO-ANCA)は低下し、聴力も改善した。
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