発行日 2013年4月1日
Published Date 2013/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2013197244
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72歳男。糖尿病および高血圧のため加療中であった。労作時に一過性の胸部不快感が増悪し、急性心筋梗塞を疑われ緊急搬送となった。貧血と血小板減少を認め、PTの延長、CEAの上昇、BNP高値、軽度の心陰影の拡大を認めた。心電図は異常Q波、ST上昇を認めた。心エコーでは右室拡大を認めた。GAG所見では肺動脈圧が上昇していたが、肺動脈造影では異常なく、原因は不明であった。胸部CTでは、肝浸潤を伴う不整な胆嚢壁肥厚を認め、胸腹水の貯留と鎖骨上や腹腔内のリンパ節腫大が認められ、進行性胆嚢癌と考えられた。両肺には斑状のスリガラス陰影が散在し、Stage IVbの進行胆嚢癌と診断した。微小な肺腫瘍塞栓により肺高血圧も考えたが確定診断に至らず、全身状態が急速に悪化し第37病日に死亡した。剖検所見では胆嚢は腫脹し不整肥厚を呈し肝臓に直接浸潤していた。病理学的には高~中分化型管状腺癌の胆嚢癌で肝内胆管へ直接浸潤し、肺、胃、後腹膜への脈管侵襲を認め、Virchow節を含め広範囲にリンパ節転移を認めた。肺動脈塞栓は肉眼的には認めなかったが、肺の細動脈内に多数の腺癌細胞の小集塊を認め、フィブリン血栓の形成や内膜の増生を伴い、肺高血圧の原因が直接死因と考えられた。肺細動脈内の癌細胞は免疫染色でVEGFが陽性であった。
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