発行日 2003年9月1日
Published Date 2003/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2004040302
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
53歳男.Borrmann4型胃癌で胃切除術を受けている.全身倦怠感を自覚し,めまいも生じ緊急入院となった.動脈血ガス分析で著しい低酸素血症を認め,二酸化炭素分圧も低値を示した.肺血流シンチグラフィでは両肺に細かな欠損像がみられた.心臓超音波検査では,右心系の著しい拡大と左室内腔の狭小化が認められた.右心カテーテル検査では肺動脈圧が62/38mmHg,PCWPは14mmHgと,前毛細血管性の肺高血圧を認めた.低酸素血症と急性肺性心の所見を認めたため肺血栓塞栓症を疑い,経静脈的にurokinase(24万単位/day)およびheparin sodium(2万単位/day)の投与を開始した.動脈血酸素飽和度91%と軽度の改善がみられたが,翌日には血圧の低下が徐々に進み,心臓超音波検査で右室負荷所見の増悪がみられた.2日後,突然呼吸困難を訴え,徐脈となり呼吸停止,心停止にいたった.蘇生術に反応せず,同日死亡した.剖検により,肺小動脈には微小な腫瘍塞栓がみられ,この腫瘍塞栓は組織学的所見の一致から胃癌の転移によるものと推測され,いわゆるPTTMに相当する病態と思われた
©Nankodo Co., Ltd., 2003