発行日 2013年4月1日
Published Date 2013/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2013197245
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44歳男。32歳時に肺クリプトコッカス症の既往があった。血友病Aに対し使用した非加熱血液製剤でHIV、HCVに感染し、治療目的に紹介となった。抗HIV治療でHIV-RNA量は検出限界未満となったが、CD4陽性細胞数は100/μl前後で推移した。その後、腹部超音波で肝臓S4に結節性病変を認め、肝細胞癌と診断し、肝動脈塞栓術(TAE)を局所再発を含み4回施行された。さらに右腸骨転移を認め、2ヵ月後には右臀部に腫瘤が出現し、右腸腰筋、大臀筋、大腿四頭筋への転移が疑われた。放射線療法、ラジオ波焼灼療法、抗癌化学療法など集学的治療を実施し、症状コントロールが可能となり退院したが、全身倦怠感、黒色便および貧血を認め再入院となった。出血源は不明で輸血と第VIII因子補充で病状は安定したが、入院3日目に右上肢筋力低下が出現し、頸部MRIでC3-5レベルの頸椎転移病巣による頸髄圧迫所見を認めた。副腎皮質ステロイド系投与と頸椎への放射線照射を行ったが、入院11病日より呼吸麻痺が出現し、その5日後に死亡した。剖検では肝臓全体に腫瘍結節があり、両肺、頸椎、右腸骨、右腸腰筋、大臀筋、大腿四頭筋に転移巣を認めた。また、小腸粘膜に広範囲なびらんを認め、消化管出血源と考えた。右大腿四頭筋部の病理所見で筋肉内に中分化型肝細胞癌細胞を認め、一部は脈管内に癌細胞を認め、血行性転移を証明していた。
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