診療controversy medical decision makingのために 門脈腫瘍塞栓のある肝細胞癌の治療
動注化学療法の立場から
小尾 俊太郎
1
,
佐藤 新平
1佐々木研究所附属杏雲堂病院 消化器・肝臓内科
キーワード:
肝細胞癌
,
腫瘍侵入性
,
門脈
,
流血中腫瘍細胞
,
診療ガイドライン
,
治療成績
,
肝動脈内注入化学療法
,
Sorafenib
Keyword:
Carcinoma, Hepatocellular
,
Neoplasm Invasiveness
,
Neoplastic Cells, Circulating
,
Portal Vein
,
Treatment Outcome
,
Practice Guidelines as Topic
,
Sorafenib
pp.307-311
発行日 2012年8月1日
Published Date 2012/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2012299760
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今回、門脈腫瘍塞栓(PVTT)のある肝細胞癌(HCC)の治療方法について、動注化学療法の立場から議論することになった。臨床雑誌「内科」の連載シリーズの一端を担うので、まず全体像を述べた後、各論に入りたい。厚生労働省人口動態統計によると、肝癌は男性で第4位、女性では第5位の頻度の高い疾患ある。本邦における原発性肝癌の94%はHCCであり、その約80%はB型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)に起因する。肝炎ウイルスに対する感染防御やウイルス駆除の効果により、1995年以降死亡率は横ばいとなった。しかし、いまだ多くの慢性肝炎患者と近年増加傾向にある非アルコール性脂肪性肝疾患(non alcoholic fatty liver disease:NAFLD)が母地となり、新たな肝癌患者が発生している。肝癌患者の特徴として、異時性多中心性発癌と母地となる慢性肝炎・肝硬変による肝機能悪化がある。このため、肝癌の生存率は必ず右肩下がりとなり、患者は亡くなっていく。門脈腫瘍浸潤は、肝血流量を低下させるとともに、門脈圧を亢進させるため、肝癌の中で非常に予後不良な病態である。われわれの局所療法後227例における平均観察期間19ヵ月の検討でも11%(24/227)に門脈腫瘍浸潤の発現を認めた。本議論は、その門脈腫瘍浸潤への治療手段についてである。
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