発行日 2017年5月1日
Published Date 2017/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2017275454
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72歳男。腰痛と顔面蒼白を主訴とした。収縮期血圧50mmHg台でショック状態であった。腹部造影CTにて、腎動脈下腹部大動脈瘤の破裂、後腹膜腔に血腫を認めた。動脈相では、腹部大動脈瘤の下大静脈(IVC)は造影されなかった。緊急手術を施行し、収縮期血圧は50mmHgのショック状態で、後腹膜切開前の段階では、少量の血性腹水と多量の後腹膜血腫を認めた。剥離操作中に突然さらなる血圧低下を認めたため、腹部大動脈と両側総腸骨動脈を遮断すると、収縮期血圧は回復した。血液逆流のみられる腰動脈を1本刺入・結紮すると、動脈性出血は制御された。しかし、大量の静脈性出血を認めたため検索すると、腹部大動脈瘤の右側後壁に約10cmの破裂所見があり、同部で隣接するIVCに長軸方向約7cmにわたる亀裂を認めた。その亀裂からIVC内腔が確認されたため、IVCへの穿破と判断した。IVC中枢側および末梢側の左右総腸骨静脈に導尿用バルーン付きカテーテルを挿入し、出血を制御しつつ、亀裂部を縫合閉鎖した。Y型人工血管にて腹部大動脈置換術を行った。術後は経過良好で、第33病日に独歩により退院となった。
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