臨床室
人工膝関節全置換術を行ったオクロノーシスの2例
飯高 世子
1
,
小泉 泰彦
,
安井 哲郎
,
門野 夕峰
,
伊藤 英也
,
田中 栄
1東京大学 整形外科・脊椎外科
キーワード:
Homogentisic Acid
,
X線診断
,
関節可動域
,
膝関節
,
組織黒変症
,
膝関節置換術
Keyword:
Homogentisic Acid
,
Knee Joint
,
Ochronosis
,
Radiography
,
Range of Motion, Articular
,
Arthroplasty, Replacement, Knee
pp.534-537
発行日 2014年6月1日
Published Date 2014/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2014325136
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症例1(61歳男性)。59歳時より左股関節および両膝痛が生じTKAにて対処したが、関節内が黒色に変化していたため、60歳時に精査目的で著者らの施設へ紹介となった。精査により耳介の色素沈着ほか、アルカリ添加試験による尿黒変、尿中HGA高値は認められ、オクロノーシスと診断された。今回、右TKAを行なうにあたって入院となったが、右膝関節単純X線像上では外側優位に関節裂隙が狭小化しており、関節内遊離体もみられた。また、腰椎単純X線像上では椎間板の石灰化や椎体の癒合が認められた。以上、これらの所見を踏まえて手術を行なったところ、大腿骨遠位骨切り後の断面を観察すると、軟骨表層は白色であるものの中間層から深層にかけては黒色であった。骨質には問題なく通常の人工膝関節全置換術(TKA)が施行されたが、目下、術後3年経過で疼痛はなく、歩行も可能である。症例2(70歳男性)。52歳時より腰痛、左股関節および両膝痛が生じ近医を受診、強直性脊椎炎と診断された。その後、66歳時には著者らの施設にて体表の色素沈着、特徴的な脊椎X線像所見よりオクロノーシスと診断され、翌年、膝関節症に対して右TKAを行ない、今回、左TKAの目的で入院となった。単純X線像上では左膝関節は内・外側ともに関節裂隙が狭小化し、関節内遊離体もみられた。また、腰椎には椎間板の石灰化や椎体の癒合が認められた。以上、これらの所見を踏まえて手術を行なったところ、関節軟骨は黒色であったものの骨質は問題なく、通常のTKAが施行された。その結果、目下、右膝術後9年、左膝術後6年の時点で、両膝はともに疼痛やインプラントの弛みはなく、屋内歩行も可能である。
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