発行日 2009年6月1日
Published Date 2009/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2009241360
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症例1:37歳女。彫刻刀で左母指中手指節(MP)関節掌側部を刺傷し、1ヵ月後に母指屈曲した際に痛みと引っかかりが生じた。腱鞘炎の診断でステロイド注入されたが改善なく、当院受診となった。受傷後3ヵ月の所見で、母指指節間(IP)関節を伸展位から自動的に屈曲しようとすると、疼痛を伴う弾発現象が生じた。外傷性屈筋腱部分損傷による弾発現象の可能性を考え手術を施行し、屈曲させると部分断裂した長母指屈筋腱の遠位部が弁状となってA1プーリー部で引っかかり、弾発現象を生じると共に、IP関節の屈曲が障害された。左長母指屈筋腱は2/3い状断裂し、残りの腱は中央が穿孔していた。断裂部分を縫合し、術後8週で弾発現象、関節可動域(ROM)制限はない。症例2:13歳男。転倒してガラスが右中指MP関節部掌側に刺さり、その後中指屈伸時に痛みと弾発現象が生じた。右中指近位指節間関節を屈曲位から伸展させると弾発現象が生じ、外傷性屈筋腱部分損傷による弾発現象の診断で手術を施行した。A1プーリーを切離・翻転したところ、浅指屈筋腱尺側は一部断裂し、近位部が弁状となっており、同部位がA1プーリーを通過する際に引っかかりを生じていた。断裂部分を縫合し、術後2年で弾発現象はなく、疼痛、ROM制限はない。
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