発行日 2006年6月1日
Published Date 2006/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2006225122
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85歳女.12年前に左大腿骨頸部骨折で人工骨頭置換術を施行されていた.今回,転倒後に左股関節部痛が出現し,骨頭のproximal migrationが生じてきたため左人工股関節全置換術を施行したが,8ヵ月後に左大腿骨大転子部5横指末梢側に瘻孔を生じるようになった.X線およびCTでソケットは腸骨内にmigrationし,周囲には全周囲性にradiolucent lineを認め,大腿骨骨幹端部の前外方部に骨欠損を生じていた.瘻孔部の細菌検査は陰性であったが,瘻孔造影で股関節腔内への交通を認めた.数回の洗浄掻爬を行なうも,瘻孔は閉鎖しなかった.人工股関節抜去術を施行した後,感染徴候がないことを確認して再置換術を行った.瘻孔は閉鎖したが,1ヵ月後に股関節脱臼を生じ,整復後も反復性に脱臼を繰り返したため再々手術を行った.ソケットを約45°の外方傾斜角度とし,頸部を5mm延長したが,中臀筋はほぼ消失していた.術後2ヵ月で退院となったが不良肢位により脱臼を生じ,再入院の上観血的整復術を行った.再々置換術として摩耗したライナーを交換し,フードの位置をやや前外方寄りとして大腿筋膜張筋の一部を短冊状に切離し,大転子部に縫着・補強した.その後の経過は良好である
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