発行日 2003年10月1日
Published Date 2003/10/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2004048445
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症例は30年間大型包丁でブタを解体する仕事に就いていた右利きの59歳男性で,仕事中に突然右小指が屈曲不能となり来院した.初診時,右小指の屈曲はMP関節のみ可能で,DIP・PIP関節とも自動屈曲は不可能であった.画像所見で小指屈筋腱が連続性を失っていることが確認され,小指屈筋腱断裂の診断で手術を施行した.術中所見では手根管展開にて断裂した深指屈筋腱と浅指屈筋腱の断端が軽度炎症を伴った滑膜中に認められた.鉤状突起による摩耗が断裂の原因と考え,再断裂防止のため突起よりノミにて切除し,断裂した腱は長掌筋腱を移植して修復した.鉤状突起切除標本の病理組織学的所見では橈側面からみた掌側は正常軟骨面を呈したが,突起基部付近では軟骨の光沢が消失,突起橈側面基部で軟骨が菲薄化していた.術翌日から関節可動域(ROM)訓練を開始,術後5ヵ月でROM制限はなくなった.以上より,手関節尺屈位での小指屈曲となる特殊な肢位での職業・スポーツでは小指屈筋腱皮下断裂を起こすことがあると考えられた
©Nankodo Co., Ltd., 2003