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60歳女。浮腫と低栄養を主訴とした。1年前に下部胆管癌に対し、膵頭十二指腸切除術および門脈合併切除術が施行された。術後S-1単剤を投与したが、術後3ヵ月目に右肺S5に結節状陰影が指摘され、1年2ヵ月目には腫瘍マーカーが漸増傾向となった。経過観察後、術後1年6ヵ月目の胸腹部造影CTで右肺S5の結節状陰影が増大し、原発性肺癌を疑った。更に1ヵ月後のCTにて、膵空腸吻合部から24mm離れた残膵尾部に、12mm大の乏血性腫瘍を認め、残膵癌とした。再発・転移所見はなかったため、両者の外科的切除を予定した。入院時、低栄養と肝機能異常を認めた。胸腹部CTにて、残膵尾部に12mm大の乏血性腫瘍とその末梢の主膵管拡張を認めた。右肺S5には22mm大の結節状陰影を認めた。残膵腫瘍が原発性か転移性かの診断は困難であったが、残膵に発生した通常型膵癌として手術を行った。残膵腫瘍の位置が膵空腸吻合部より1cm程度のところまで認められたため、吻合空腸の切離も含めた残膵全摘術、脾摘術、リンパ節郭清を施行した。病理組織学的所見にて、空腸外層侵襲を認め、リンパ節転移は認めない、well differentiated papillary carcinomaであった。また、原発性膵癌と診断した。術後は経過良好で、術後1ヵ月目に右中葉肺癌に対し、右肺中葉切除術を施行した。病理診断はwell differentiated papillary carcinoma(mucinous type)であった。術後6日目に軽快退院となったが、術後7ヵ月目に肺転移が出現した。神経浸潤による再発と診断し、外来にて化学療法を施行中であり、肺切除後1年3ヵ月再発生存中であった。
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