発行日 2016年4月1日
Published Date 2016/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2016316474
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56歳女性。急激な上腹部痛を主訴に救急搬送された。入院時、腹部は平坦・軟で心窩部から臍周囲にかけて圧痛を認めたが、腹膜刺激症状は認められなかった。腹部CTでは膵頭部上縁の高さから右腎下極をこえて回盲部近傍まで右側後腹膜に広範な低~等吸収領域が認められたが、造影剤の血管外漏出像や腹腔内遊離ガスは認められなかった。また、第4病日目のMRIでも腫瘍性病変は認められなかった。以上より、本症例は後腹膜血腫と診断され、第11病日目に造影CTを行ったところ、後腹膜血腫は縮小を認めた。そのため、翌日より経口摂取を再開したが、同日に嘔気が出現した。腹部単純X線像では胃の著明な拡張像が確認され、十二指腸狭窄が疑われた。そこで、経鼻胃管を挿入し、第14病日目に経鼻胃管から造影検査を行った。その際、十二指腸下行脚での狭窄ほか、造影剤の流出を認めたため、同日、経鼻胃管を抜去した。以後、第15病日目より経口摂取を再開し、最終的に第31病日目に患者は退院となった。尚、第47病日目の造影CTでは、血腫は消失し、明らかな動脈瘤や動静脈奇形なども指摘できなかった。目下、約1年経過で再出血は認められていない。
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