発行日 2015年4月1日
Published Date 2015/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2015263642
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
60歳代後半女性。検診の超音波検査にて腹腔内に嚢胞性病変を指摘され、婦人科へ紹介となった。受診時、右下腹部にはわずかに可動性のある手拳大の腫瘤が触知された。また、腹部造影CTでは右下腹部の骨盤内に106×61×55mm大の嚢胞性腫瘤が存在し、嚢胞壁に造影される構造物が認められ、盲腸壁と接しており虫垂由来と考えられた。一方、腹部MRIでは右下腹部にT2強調像で高信号を示す嚢胞性病変がみられたが、大腸内視鏡では盲腸や回腸末端も含め明らかな異常所見は認められなかった。以上、これらの所見を踏まえ、本症例は虫垂粘液嚢胞腺腫瘍(腺癌疑い)と診断され、腹腔鏡下に右半結腸切除術が施行された。術中所見では腹腔内に腹水や粘液貯留は認められなかったが、白色の周囲組織と癒着しない虫垂腫瘍が確認され、授動と血管処理をD2郭清で行い、臍部創を拡張して腫瘍と腸管を体外に取り出し腸切除を施行した。その結果、切除標本では虫垂は緊満した12.1×7.8×6.6cm大の嚢胞性病変であり、内部にゼリー状の粘液が充満していた。病理組織学的所見では虫垂の嚢胞壁の一部に悪性腫瘍が確認され、粘液嚢胞腺癌(SS、ly0、v0、pN0、PM0、DM0、Stage II)と診断された。尚、患者は術後12日目に退院となり、目下、1年6ヵ月経過で再発は認められていない。
©Nankodo Co., Ltd., 2015