発行日 2014年9月1日
Published Date 2014/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2015062456
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62歳男性。既往として59歳時に急性心筋梗塞に対する経皮的冠状動脈形成術ほか、高血圧、高脂血症、高尿酸血症にて内服加療中であった。今回、臍下部痛と嘔吐の繰り返しから食事摂取困難となり入院となった。所見では単純X線像で右上腹部部ニボー像を認め、CTでは十二指腸および胃の拡張と十二指腸水平脚に造影効果を伴う壁肥厚が認められた。また、上部消化管内視鏡では十二指腸水平部にほぼ全周性で易出血性の隆起性病変が確認され、生検では高分化型腺癌であった。以上より、本症例は原発性十二指腸癌(AJCC分類T3N0M0、stage II)と診断されたが、術前に急性心筋梗塞の既往から心機能評価を行なったところ、心エコーで駆出率は39.6%で、加えて左室下壁・後壁の運動低下も認められた。更に冠状動脈造影では右冠状動脈2番に75%の狭窄に加え、左前下行枝7番に50%の狭窄と左回旋枝11番の完全閉塞が認められた。そこで、著者らは患者・家族に説明を行ない、経口摂取が不可能であることから開腹手術を選択することなった。手術は十二指腸下行部を腫瘍から口側2cmで切離し、肛門側はTreitz靱帯から約10cmの空腸で切離して、十二指腸下行部と挙上空腸を側々吻合して再建した。その結果、切除標本の病理組織学的所見では腫瘍はAJCC分類T3N1M0、stage IIIであった。尚、最終的には術後6ヵ月で患者は右肺転移、胸膜播種が判明し徐々に悪化、術後12ヵ月目には頭皮に転移性皮膚癌を認め、手術と術後補助療法が行われたが効果なく、患者は術後22ヵ月目に死亡となった。
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