発行日 2012年9月1日
Published Date 2012/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2013031675
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78歳男性。20年前から心房細動に対しアスピリン内服中であった。今回、黒色便を主訴に近医を受診、貧血を指摘され、精査目的で著者らの施設へ紹介となった。入院時、検査所見では低球性低色素性貧血が認められたが、血小板数は正常で、PTは56%と低下、肝や腎機能には異常なく、肝炎ウイルスも陰性であった。一方、上部消化管内視鏡では前庭部に全周性で放射状に広がるびまん性の毛細血管拡張が認められ、びまん性胃前庭部毛細血管拡張症と考えられたが、幽門輪にも全周性の強い発赤所見が認められた。以後、同部位を貧血と下血の原因と判断し、内視鏡的アルゴンプラズマ治療を2回施行したが、その後も下血を繰り返し貧血も徐々に増悪した。そこで、幽門側胃切除術を施行した結果、切除標本の病理組織学的所見では多数の潰瘍が散在しており、粘膜には毛細血管の拡張や増生が目立ち、粘膜下層の静脈も拡張していた。尚、悪性所見はなく、術後も経過良好で、患者は術後第9病日目に軽快退院となった。
©Nankodo Co., Ltd., 2012