発行日 2012年4月1日
Published Date 2012/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2012220177
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40歳代女。家族性大腸ポリポーシス(FAP)に対し、腹腔鏡下大腸全摘術、回腸嚢肛門管吻合術、回腸ストーマ造設術(同閉鎖術)を施行した。経過観察中の約1年6ヵ月後に、腹部膨満症状が出現したため入院となった。炎症反応の亢進、肝・腎機能異常、腫瘍マーカーの上昇などの有意な所見は認めず、1年前の腹部造影CTには認めなかった11cm大の骨盤内腫瘍が周囲の腸管・子宮を圧排して発育していた。腹部造影MRIでは、線維成分を多く含む後腹膜または子宮付属器由来の腫瘍を疑われた。FDG-PET/CTでは、軽度のFDG集積(SUVmax 2.89)を認めた。経腟針生検でも腫瘍性の病変が疑われたが、良・悪性の鑑別は不明であった。以上より、デスモイド腫瘍または卵巣線維腫、莢膜細胞腫、子宮平滑筋腫、子宮広間膜由来の線維腫などを疑い開腹術を行った。骨盤腔内に12cm程度の腫瘍を認め、仙骨前面に強固に癒着していたため、切除不能と判断し切開生検を行った。異型のない分化下線維芽細胞と緻密な膠原線維の増生を認め、組織学的には線維腺腫の像であり、臨床像と合わせデスモイド腫瘍と診断した。tamoxifen+sulindacの併用療法を施行し、1ヵ月時点で不変(SD)であったが、その後徐々に縮小し、有効(PR)を得た。治療開始後14ヵ月を経てPRを維持し治療を継続中である。
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