腫瘍栓のすべて
腫瘍栓の外科治療 切除のコツと予後からみた適応 肝静脈内腫瘍栓
木村 文夫
1
,
宮崎 勝
,
清水 宏明
,
吉留 博之
,
大塚 将之
1千葉大学 大学院臓器制御外科学
キーワード:
肝細胞癌
,
肝循環
,
肝静脈
,
肝切除
,
門脈
,
流血中腫瘍細胞
Keyword:
Hepatectomy
,
Hepatic Veins
,
Carcinoma, Hepatocellular
,
Liver Circulation
,
Neoplastic Cells, Circulating
,
Portal Vein
pp.172-177
発行日 2008年2月1日
Published Date 2008/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2008135407
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肝静脈腫瘍栓は門脈腫瘍栓とともに進行肝細胞癌に特徴的な脈管侵襲様式であり、主腫瘍の局在や肝機能とともに切除術式を規定する重要な因子となる。Vv1では肝静脈本幹の温存が可能であるが、Vv2では、併存するVpに応じた区域切除や葉切除に加えて、腫瘍栓の存在する静脈本幹の合併切除が必要となる。Vv3症例では全肝血行遮断(THVE)が必要となり、Pringle法に加え、下大静脈の尾側を腎静脈合流直上で、頭側は腫瘍栓の進展度に応じて横隔膜下や心嚢内で遮断する。THVEの遮断時間の安全域はおおむね60分以内であるが、障害肝では肝不全などの術後合併症の危険性が高まる。血管侵襲を有する肝細胞癌の予後は不良で、切除例の5年生存率は20%以下にとどまる。Vv1・Vv2や術前TAE・TAIにより腫瘍栓の縮小が得られたVv3症例に対しては積極的な切除が望まれ、腫瘍栓が右房に達するような症例では慎重な症例選択が必要となる。
©Nankodo Co., Ltd., 2008