膵頭十二指腸切除術(PD)をめぐる諸問題
膵頭部癌に対する拡大郭清により生存率は向上するか
高橋 祐
1
,
梛野 正人
,
小田 高司
,
西尾 秀樹
,
江畑 智希
,
横山 幸浩
,
安部 哲也
,
伊神 剛
1名古屋大学 大学院腫瘍外科
キーワード:
膵臓腫瘍
,
膵頭十二指腸切除
,
生存率
,
リンパ節郭清
,
ランダム化比較試験
Keyword:
Lymph Node Excision
,
Pancreatic Neoplasms
,
Survival Rate
,
Randomized Controlled Trials as Topic
,
Pancreaticoduodenectomy
pp.886-889
発行日 2007年8月1日
Published Date 2007/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2007337345
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膵癌は他の消化器癌に比べその治療成績はきわめて不良である。この難治性癌に対し、本邦の外科医は広範囲リンパ節郭清、神経叢郭清を伴う拡大手術が予後の向上を得られると考え、数多くの報告を発信してきたが、それらはすべて症例集積研究であり、ランダム化比較試験(RCT)による科学的証明ではなかった。膵頭部癌に対する拡大手術と標準手術のRCTは欧米から3報告があり、いずれも拡大郭清の意義はないという結果になったが、拡大郭清の方法・結果に多少の疑問が残った。2000年から始まった本邦のRCTは、欧米のそれとは異なり、日本式の徹底した拡大郭清と標準手術とを比較し、結果としては両者の生存率に有意差はなく、術後QOLも拡大手術のほうが不良であった。この結果から、膵頭部癌に対する広範囲リンパ節郭清や神経叢郭清を伴う拡大手術の意義はないと結論づけることができる。しかし、根治を期待しうる治療法は依然として外科的切除であることは間違いなく、今後は確実な局所切除と、術後可及的速やかなadjuvant chemotherapyを行うことが肝要と考える。
©Nankodo Co., Ltd., 2007