発行日 2006年12月1日
Published Date 2006/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2007069252
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88歳男。腹痛、嘔吐が出現し点滴加療、少量の経口摂取可能となったが徐々に腹痛が増強した。歩行可能で排ガスを認めるが排便は腹痛出現後認めなかった。腹部は膨満し筋性防御を認め、左鼠径部に皮膚発赤、圧痛を伴う鶏卵大の腫瘤を認めた。また高度炎症所見を認めたが肝機能や腎機能に異常を認めなかった。腹部単純X線で腹部全体に多量の小腸ガス像を認めた。腹部CTではイレウス所見はなく左鼠径部に嵌頓した腸管を認め腸管は左側結腸と連続しておりS状結腸嵌頓が示唆された。S状結腸のRichter型ヘルニア嵌頓と診断し、緊急手術を施行した。開腹すると腹腔内に膿性腹水が貯留しS状結腸は腸間膜の腸壁が内鼠径輪にRichter型に嵌頓し、虚血壊死となり嵌頓部周囲腹壁に穿通していた。双口式S状結腸人工肛門造設術、鼠径ヘルニア修復術、腹腔内ドレナージを施行し、術後経過は良好で軽快退院した。
©Nankodo Co., Ltd., 2006